アスファルト防水とは?仕組み・特徴・メリットデメリットを徹底解説
目次
アスファルト防水とは?

建物における防水対策は、雨水や雪などから建物を守り、快適な室内環境を維持するために不可欠です。
その中でも、アスファルト防水は古くから実績のある防水工法の一つです。
アスファルト防水は、建物の防水工法のひとつで、溶融アスファルトとルーフィングシートを重ね合わせて防水層を形成する工法です。
防水工法の種類と特徴

防水工法は、建物の種類や用途、気候条件などによって様々な種類が存在します。
代表的な防水工法としては、以下のようなものが挙げられます。
アスファルト防水:
・溶融アスファルトとルーフィングシートを積層して防水層を形成する工法です。
・耐久性・水密性に優れており、屋上や地下など幅広い箇所で使用されます。
シート防水:
・合成ゴムや塩化ビニルなどのシート状の防水材を貼り付ける工法です。
・施工性が高く、複雑な形状にも対応できます。
塗膜防水:
・ウレタンやシリコンなどの液体状の防水材を塗布して防水層を形成する工法です。
・継ぎ目のない美しい仕上がりになり、様々な下地に対応できます。
これらの防水工法は、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。
建物の種類や用途、予算などを考慮して、最適な工法を選択することが重要です。
アスファルト防水の定義と歴史

アスファルト防水は、溶融したアスファルトとルーフィングと呼ばれる防水シートを何層にも重ねて貼り付けることで、防水層を形成する工法です。
高い防水性と耐久性が特徴で、ビルやマンションの屋上、地下室などで広く採用されています。
アスファルト防水の歴史は古く、19世紀初頭にはすでに現在の工法の原型となるものが存在していました。
日本においては、明治時代に導入され、長い歴史の中で技術改良が重ねられてきました。
現在では、様々な工法や材料が開発され、建物の多様なニーズに対応しています。
アスファルト防水は、その長い歴史と実績から、信頼性の高い防水工法として知られています。
アスファルト防水の仕組み

アスファルト防水は、溶融アスファルトとルーフィングシートを組み合わせることで、強固な防水層を形成する工法です。
その仕組みについて詳しく見ていきましょう。
アスファルト防水の材料と構造
アスファルト防水の主な材料は、以下の2つです。
①アスファルト:
・原油を蒸留して得られる炭化水素化合物の混合物です。
・高温で液体になり、冷却すると固体になる性質を持ちます。
・防水性、接着性、耐久性に優れています。
②ルーフィングシート:
・合成繊維不織布やガラス繊維などにアスファルトを含浸させたシート状の材料です。
・防水層の補強材として使用され、耐久性を向上させます。
これらの材料を交互に重ねることで、多層構造の防水層が形成されます。この構造により、高い防水性と耐久性が実現されます。
主な工法
アスファルト防水には、主に以下の3つの工法があります。
①熱工法:
・溶融アスファルトを使用し、ルーフィングシートを貼り付ける工法です。
・高温で施工するため、冬季でも安定した品質が得られます。
・耐久性が高く、大規模な建物に適しています。
②トーチ工法:
・トーチバーナーでルーフィングシートを炙り、溶融アスファルトを溶かしながら貼り付ける工法です。
・熱工法に比べて施工性が高く、小規模な建物にも適しています。
・煙やにおいが発生しやすい為住宅地などでは注意が必要です。
③常温工法:
・常温で使用できるアスファルト系接着剤を使用し、ルーフィングシートを貼り付ける工法です。
・火気を使用しないため、安全性が高く、改修工事に適しています。
・熱工法、トーチ工法に比べると耐久性はやや劣ります。
これらの工法は、それぞれ特徴や適用範囲が異なります。
建物の種類や規模、周辺環境などを考慮して、最適な工法を選択することが重要です。
施工手順
アスファルト防水の一般的な施工手順は、以下の通りです。
1.下地処理:
施工面の清掃や補修を行い、平滑な状態にします。
2.プライマー塗布:
下地にプライマーを塗布し、接着性を高めます。
3.ルーフィングシート貼り:
ルーフィングシートを貼り付け、必要に応じて溶融アスファルトを塗布します。
4.保護層施工:
必要に応じて、保護層を施工し、防水層を保護します。
アスファルト防水のメリット

アスファルト防水は、長い歴史の中で培われた技術と実績により、多くのメリットを持つ防水工法です。
高い防水性と耐久性
アスファルト防水は、溶融アスファルトとルーフィングシートを何層にも重ねて貼り付けるため、非常に厚く強固な防水層を形成できます。
この多層構造により、以下のような高い性能を発揮します。
- 高い防水性: アスファルトは水を通さない性質を持ち、ルーフィングシートとの組み合わせにより、水の侵入を確実に防ぎます。
- 優れた耐久性: アスファルトは耐候性・耐薬品性に優れており、紫外線や酸性雨などの影響を受けにくく、長期間性能を維持します。
幅広い施工実績と信頼性
アスファルト防水は、19世紀から続く長い歴史の中で、様々な建物で採用されてきました。
その実績は、アスファルト防水の信頼性を証明しています。
- 豊富な施工実績: ビル、マンション、戸建て住宅、地下構造物など、幅広い建物で採用されています。
- 高い信頼性: 長年の実績と技術改良により、品質の高い防水層を形成できます。
- 安定した品質: 工場生産されたルーフィングシートを使用するため、品質が安定しています。
耐用年数が長い
アスファルト防水は、適切な施工とメンテナンスを行うことで、他の防水工法よりも長い耐用年数を期待できます。
一般的に、アスファルト防水の耐用年数は15年から30年程度と言われています。
- 長期的なコストパフォーマンス: 耐用年数が長いため、長期的に見るとコストパフォーマンスに優れています。
- メンテナンス性の高さ: 定期的なメンテナンスを行うことで、さらに寿命を延ばすことができます。
アスファルト防水のデメリット

アスファルト防水は多くのメリットを持つ一方で、いくつかのデメリットも抱えています。
これらのデメリットを理解した上で、適切な防水工法を選択することが重要です。
施工時の臭いや煙
アスファルト防水の施工時には、溶融アスファルト特有の臭いや煙が発生します。
特に熱工法では、高温のアスファルトを使用するため、臭いや煙が強く出やすい傾向があります。
周辺環境への影響:
・住宅密集地や商業地域などでは、周辺住民や通行人に不快感を与える可能性があります。
・施工前には、周辺への配慮や対策が必要です。
作業環境:
・作業者にとっても、臭いや煙は健康への影響が懸念されます。
・十分な換気や保護具の使用が必須です。
近年のアスファルト防水では、常温工法も普及しており、臭いや煙を抑えることは可能です。
重量があるため建物への負荷が大きい
アスファルト防水は、他の防水工法に比べて重量のある材料を使用するため、建物への負荷が大きくなる可能性があります。
建物構造への影響:
・特に古い建物や構造的に弱い建物では、重量負荷が懸念されます。
・事前に建物の構造計算や耐荷重性の確認が必要です。
改修時の注意:
・既存の防水層を撤去せずに重ね張りする場合、さらに重量が増加します。
・改修時には、建物への負荷を考慮した工法選択が重要です。
施工できる業者が限られる
アスファルト防水は、専門的な知識や技術、経験が求められる工法です。
そのため、施工できる業者が限られる傾向があります。
技術力:
・適切な施工を行うには、高度な技術や経験が必要です。
・信頼できる業者選びが重要です。
専門性:
・アスファルト防水に特化した業者は、他の防水工法に比べて少ない場合があります。
・しっかりと実績などを確認する必要が有ります。
アスファルト防水の費用とメンテナンス

アスファルト防水は、建物を長期間守るために重要な役割を果たしますが、その費用やメンテナンスについても理解しておく必要があります。
アスファルト防水の費用相場
アスファルト防水の費用は、建物の規模や形状、使用する材料、工法などによって大きく変動します。
一般的な相場としては、1㎡あたり5,000円から10,000円程度です。
費用に影響する要因:
・施工面積
・使用するアスファルトやルーフィングシートの種類
・施工する工法(熱工法、トーチ工法、常温工法など)
・下地処理の程度
・施工業者の技術力や実績
見積もりのポイント:
・複数の業者から見積もりを取り、比較検討する
・見積もりの内訳をしっかり確認し、不明な点は質問する
・保証内容やアフターサービスについても確認する
定期的なメンテナンスの重要性
アスファルト防水は耐久性に優れていますが、定期的なメンテナンスを行うことで、より長く建物を守ることができます。
メンテナンスの目的:
・防水層の劣化を早期に発見し、補修する
・防水層の寿命を延ばす
・雨漏りなどのトラブルを未然に防ぐ
メンテナンスのタイミング:
・一般的に、10年から15年ごとに定期的な点検やメンテナンスを行うことが推奨されます。
・台風や地震などの災害後には、早めに点検を行うことが重要です。
メンテナンス方法と注意点
アスファルト防水のメンテナンス方法には、以下のようなものがあります。
定期点検:
・防水層のひび割れ、剥がれ、膨れなどの劣化状況を目視で確認します。
・排水口の詰まりやゴミの堆積なども確認します。
部分補修:
・小さなひび割れや剥がれは、部分的に補修することができます。
・専門業者に依頼し、適切な補修材や工法で補修してもらうことが重要です。
全体改修:
・防水層全体の劣化が進んでいる場合は、全体的な改修が必要になります。
・既存の防水層を撤去し、新しい防水層を形成します。
メンテナンスの注意点:
・素人が自己流で補修すると、かえって劣化を早めることがあります。
・必ず専門業者に相談し、適切なメンテナンスを行いましょう。
・メンテナンスの時期や方法は、建物の環境や状況によって変わるので、専門家と相談して計画を立てましょう。
アスファルト防水が適している建物

アスファルト防水は、その特性から特定の建物や場所において、特に高い性能を発揮します。
アスファルト防水がよく使われる場所
アスファルト防水は、以下のような場所でよく使用されます。
屋上:
・広い面積の屋上や陸屋根は、アスファルト防水の耐久性と防水性が最大限に活かされます。
・特に、雨水が溜まりやすい平坦な屋上において、その効果を発揮します。
地下構造物:
・地下室や地下駐車場など、常に水圧がかかる場所では、アスファルト防水の優れた水密性が重要です。
・建物を地下水から守り、長期的な耐久性を確保します。
ビルやマンションの屋上:
・大規模な建築物では、その耐久性と信頼性から、アスファルト防水が選ばれることが多いです。
・広い面積に対応できる点も、大規模建築物に適しています。
駐車場:
・車両の重量や、雨水、油分など、劣化を促進させるものが多い駐車場では、耐久性の高いアスファルト防水が適しています。
アスファルト防水が向かない場所
一方で、アスファルト防水が適さない場所もあります。
複雑な形状の場所:
・アスファルト防水は、平面や緩やかな傾斜には適していますが、複雑な形状の場所には施工が難しい場合があります。
・複雑な形状の場所には、シート防水や塗膜防水など、他の工法が適している場合があります。
常に振動がある場所:
・アスファルト防水は、振動に弱いという特徴があります。
・鉄道の近くや、工場など常に振動が発生している場所には、不向きです。
美観が重視される場所:
・アスファルト防水の仕上がりは、他の防水工法に比べて美観に劣る場合があります。
・外観を重視する場所では、他の防水工法を検討する方が良いでしょう。
木造住宅のベランダやバルコニー:
・アスファルト防水は重量があるため、木造住宅など、建物の構造によっては負荷が大きくなる可能性が有ります。
まとめ

この記事では、アスファルト防水について、その定義から仕組み、メリット・デメリット、費用、メンテナンス、そしてどのような建物に適しているのかを網羅的に解説しました。以下に記事の要点をまとめます。
アスファルト防水の基本:
・アスファルト防水は、溶融アスファルトとルーフィングシートを積層して防水層を形成する工法です。
・高い防水性と耐久性を持ち、長期間建物を保護します。
・熱工法、トーチ工法、常温工法など、様々な工法があります。
アスファルト防水のメリット:
・高い防水性と耐久性
・幅広い施工実績と信頼性
・長い耐用年数
アスファルト防水のデメリット:
・施工時の臭いや煙
・建物への重量負荷
・施工できる業者が限られる
費用とメンテナンス:
・費用は施工面積や工法によって変動します。
・定期的なメンテナンスが重要です。
適している建物:
・屋上、地下構造物、ビルやマンションの屋上など
・複雑な形状や振動が多い場所には不向きです。
信頼できる業者の選び方:
・実績、資格、見積もり、保証などを確認しましょう。
アスファルト防水は、適切な施工とメンテナンスを行うことで、建物を長期間守るための有効な手段となります。
この記事が、アスファルト防水に関する理解を深め、適切な選択をするための一助となれば幸いです。
アスファルト防水に関してご不明な点等ございましたら、お気軽に株式会社ベータまでお問い合わせください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。