店舗リフォーム費用と耐用年数の基礎知識|税務上の考え方を解説

店舗リフォーム費用と耐用年数の基礎知識|税務上の考え方を解説

店舗リフォーム費用を考えるうえで、意外と見落とされがちなのが 「耐用年数」 の存在です。
同じ工事でも、税務上の扱いによって 一括で経費にできるのか、減価償却が必要なのか が大きく変わり、結果として手元に残る利益や資金計画に直結します。

「この工事は修繕費になる?資本的支出になる?」
「賃貸店舗の内装工事は何年で償却すればいい?」
「設備や什器の耐用年数はどう判断する?」

こうした疑問を持つ店舗オーナーは多く、判断を誤ると税務調査で指摘される可能性もあります。

本記事では、店舗リフォームを行う際に必ず知っておきたい 費用区分の考え方耐用年数の基礎知識 をわかりやすく解説。
自社所有の場合と賃貸店舗の場合の違い、工事内容ごとの耐用年数の目安、税務処理で気をつけるポイントなど、実務で役立つ情報をまとめています。

これから店舗リフォームを検討している方はもちろん、節税や資金計画をより正確に行いたい方にも役立つ内容ですので、ぜひ参考にしてください!

耐用年数とは?

耐用年数とは?

リフォームの費用計上や税務処理を考えるうえで欠かせない概念が「耐用年数」です。耐用年数とは、設備や建物が“使用に耐えると想定される期間”を示すもので、税務上の減価償却や経費計上に大きく関わります。
ただし、耐用年数=実際の使用可能期間ではありません。まずは基本的な考え方から整理していきます。

耐用年数の基本的な考え方

法定耐用年数と実務耐用年数の違い

耐用年数には大きく分けて 「法定耐用年数」「実務耐用年数」 の2種類があります。

  • 法定耐用年数:税務上、国が定めた「減価償却の基準となる年数」。税務処理ではこの年数に基づいて費用計上が行われます。
  • 実務耐用年数:実際に設備や部材がどれくらい使用できるかという現場レベルの目安。「一般的な寿命」に近い考え方です。

例えば、ユニットバスの法定耐用年数は一般に22年ですが、実際には15〜25年使えるケースも珍しくありません。このように、実際の寿命と法定の数字は必ずしも一致しない点が重要です。

耐用年数=寿命ではない理由

耐用年数は、あくまで税務処理を合理化するための基準であり、「設備が壊れるまでの年数」=「耐用年数」ではありません。
使用環境やメンテナンス状況によって実際の寿命は大きく変わります。
そのため、耐用年数は「資産価値をどの期間で費用化していくか」を示す制度的な目安として捉える必要があります。

減価償却との関係

なぜリフォーム費用を一括経費にできないのか

リフォーム費用は高額になるケースが多く、資産として計上されることが多いため、一度に全額を経費にすることができません。
「建物附属設備」や「建物本体の価値向上」と判断された場合、耐用年数に応じて減価償却を行い、毎年少しずつ経費化する必要があります。

これは、リフォームによって得られる効果(価値)が数年にわたって継続するため、費用もその期間に分割して計上するべきという考えに基づいています。

耐用年数が経費計上や税務処理に与える影響

耐用年数が長ければ長いほど、毎年計上できる経費(減価償却費)は少なくなります。
反対に短い耐用年数なら、毎年の経費は大きくなります。

つまり耐用年数は、

  • 経費計上のペース
  • 節税効果のタイミング
  • 決算への影響

これらに直接つながる重要な要素です。

特に事業用としてマンションを所有している場合、リフォーム計画は耐用年数を踏まえて行うことで、キャッシュフローの最適化にもつながります。

店舗リフォームで耐用年数が必要になる場面

店舗リフォームで耐用年数が必要になる場面

店舗リフォームでは、工事内容によって費用の扱いが「一括経費」か「資産計上」かに分かれます。特に資産計上となる場合は耐用年数が必ず関わるため、税務処理を正しく行うためにも理解が不可欠です。
ここでは、店舗特有の「内装」「設備」「什器」などにおける耐用年数の基本を整理します。

内装工事の耐用年数の基本

店舗では壁・天井・床などの内装工事が多いため、まずはその耐用年数の扱いから確認しておきましょう。

建物本体に含まれるケース

内装工事の内容が建物の構造や主要部分に深く関わると判断される場合、リフォーム費用は建物本体の一部として扱われ、建物の耐用年数に合わせて減価償却されます。

例えば以下のような工事が該当します:

  • 壁・天井の下地を大きく変更
  • 間仕切り壁の構造変更
  • 床の構造部分の補強

これらは建物そのものの価値を向上させるため、長い耐用年数で償却される点がポイントです。

建物附属設備として扱うケース

空調・照明・衛生設備の交換など、店舗の使用に不可欠な設備が中心となる場合は建物附属設備に分類されます。
建物附属設備は建物本体とは別の耐用年数が設定されており、一般的には建物より短いため、償却スピードも早くなります。

具体的には、以下のような工事が該当します:

  • 照明設備の更新
  • トイレや給排水設備の交換
  • エアコンの更新
  • 電気設備の改修

「建物本体」か「附属設備」かの違いで税務処理が大きく変わるため、工事前の分類確認が非常に重要です。

設備・什器・備品の耐用年数

店舗リフォームでは、内装だけでなく什器や備品の入れ替えも多く、これらにも個別の耐用年数が設定されています。

什器・家具・陳列棚などの目安年数

店舗で使用する什器・家具・陳列棚は、一般的に耐用年数5〜8年が目安とされています。
以下が主な例です:

  • テーブル・カウンター:5年
  • 収納棚・陳列棚:5〜8年
  • レジ台・什器全般:5年前後

これらは消耗が早く、形状変更や入替の頻度も高いため、比較的短い期間で償却されます。

電気・空調・給排水設備などの耐用年数一覧

店舗で頻繁に使用される設備類には、法定の耐用年数が細かく設定されています。

代表的なものは以下の通りです:

設備・備品法定耐用年数の目安
業務用エアコン6年
給湯器6年
換気扇・ダクト設備6年
照明設備6〜10年(種類により異なる)
電気設備(分電盤・配線など)15年
給排水設備15年
防災設備(火災報知機など)10年

店舗ではこれらの交換頻度が高いため、耐用年数の理解は資金計画にも直結します。

所有形態・建物構造による違い

所有形態・建物構造による違い

店舗リフォームの耐用年数は、「どのような建物を誰が所有しているか」によって大きく変わります。自社所有か賃貸か、さらに木造・鉄骨・RCなど建物構造によっても耐用年数の区分が異なるため、税務処理の正確さに直結します。ここでは所有形態別に押さえておくべきポイントを整理します。

自社所有の建物でリフォームする場合

自社所有の建物は、建物本体の耐用年数や残存耐用年数がリフォーム費用の計上に影響します。

建物構造別の耐用年数(木造・鉄骨・RC)

建物本体の耐用年数は、構造によって大きく異なります。代表的な耐用年数の目安は次のとおりです。

  • 木造・合成木造:22年
  • 鉄骨造(骨格材厚3mm超〜4mm以下):34年
  • 鉄骨造(骨格材厚4mm超):38年
  • 鉄筋コンクリート造(RC)・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC):47年

自社所有の建物では、これらの耐用年数に基づいてリフォーム費用が「建物本体に該当する工事」か、「附属設備に該当する工事」かを判断し、減価償却が行われます。

中古物件購入時の残存耐用年数の計算方法

中古で購入した店舗物件の場合は、法定耐用年数から経過年数を差し引き、残存耐用年数を計算します。
代表的な計算方法は以下の通りです。

  • (法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 0.2
  • 計算結果が法定耐用年数の20%未満になる場合は、最低でも法定耐用年数の20%が残存耐用年数として採用されます。

残存耐用年数は、建物を資産計上した後の減価償却期間に直結するため、中古物件購入時の重要な判断材料となります。

賃貸店舗・他人名義の建物の場合

賃貸物件の場合は、建物の耐用年数ではなく、借主が合理的に見積もった使用可能期間が基準になります。自社所有とは計算の考え方が大きく異なるため注意が必要です。

合理的に見積もる耐用年数(10〜15年が目安)

賃貸物件の内装や設備工事は、建物そのものの価値を高めるものではなく「借主が独自に行う改装」とみなされるため、耐用年数は10〜15年が目安とされています。
これは、店舗の用途や業種、設備の使用状況などから合理的に判断する期間であり、税務上も妥当性が認められる範囲です。

賃借契約期間が耐用年数となるケース

賃貸契約の期間が明確に定められている場合、内装工事の耐用年数は賃借契約期間そのものが耐用年数として採用されるケースがあります。

例えば:

  • 契約期間:8年
  • 内装工事内容:借主が行った造作工事
    → 耐用年数:8年(契約期間に合わせる)

このように、賃貸物件の場合は建物本体の耐用年数よりも、「どれくらいの期間その店舗を使用できるか」が中心となる点が大きな違いです。

税務処理と節税のポイント

税務処理と節税のポイント

店舗リフォームでは、費用を「修繕費」として一括計上できるか、「資本的支出」として減価償却が必要かによって、節税効果や資金計画が大きく変わります。さらに、耐用年数の設定は税務調査の対象になりやすいため、正確な区分と書類の準備が重要です。ここでは、税務処理の基本と節税のポイントをまとめます。

修繕費と資本的支出の違い

リフォーム費用をどちらに区分するかは、税務上の大きな判断ポイントです。

「修繕費」として一括計上できるケース

「修繕費」は、建物や設備の機能を現状維持するための費用であり、その年の経費として全額計上できるのが大きなメリットです。
次のような工事は修繕費に該当しやすい例です:

  • 壊れた設備を同等品に交換
  • 壁・床・天井の張替え(グレードアップがない場合)
  • 故障したエアコンや給湯器の交換
  • 小規模な補修・修理

ポイントは、価値や機能を「新たに向上させていない」工事であることです。
この判断を誤らないことが節税に直結します。

「資本的支出」として減価償却するケース

一方、リフォームによって店舗の価値や機能が向上した場合は「資本的支出」として扱われ、耐用年数に応じて減価償却が必要です。

具体的には、以下の工事が該当しやすい例です:

  • 大規模な間取り変更
  • 内装を高グレード仕様に変更
  • 電気・空調・給排水設備の能力を大幅にアップ
  • 店舗デザインの全面リニューアル

資本的支出の誤区分は税務調査で指摘されやすいため、迷った場合は修繕費扱いにできる部分を分離計上する工夫も有効です。

耐用年数を決めるときの注意点

耐用年数の設定は、税務調査の重点確認項目のひとつです。適切に判断するために押さえておくべきポイントがあります。

税務調査で問題になりやすいポイント

税務調査で特に指摘されやすいのは次の点です:

  • 本来は資本的支出なのに修繕費として一括計上している
  • 設備の耐用年数を不自然に短く設定している
  • 契約書・見積書に「修繕」「改修」「設備入替」などの記載が曖昧
  • 工事内容と会計処理が一致していない

税務署は「工事の実態」を重視するため、書類でどれだけ説明できるかが極めて重要になります。

税理士に相談すべき判断基準と書類準備

耐用年数や費用区分の判断が難しい場合は、税理士への相談が最も確実です。特に次のようなケースはプロの判断が不可欠です:

  • 大規模な内外装リフォーム
  • 設備更新が複数項目にわたる場合
  • 賃貸物件で造作工事を行う場合
  • 節税を意識しつつ正しく処理したい場合

その際に準備しておくべき書類は、以下が基本となります:

  • 工事契約書
  • 工事見積書(項目ごとに分かれているものが理想)
  • 竣工図面・工程表
  • 工事完了報告書
  • 設備の仕様書

これらが揃っていれば、修繕費として認められやすくなり、税務調査でも説明がしやすくなります。

東海エリアのマンションリフォームはベータにお任せください!

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まとめ

まとめ

店舗リフォームにおける耐用年数の考え方は、税務処理・節税・資金計画に大きく影響する重要ポイントです。
工事内容が「修繕費」か「資本的支出」か、さらに耐用年数をどう設定するかによって、経費計上のタイミングも大きく変わります。

本文で解説したように、

  • 内装工事・設備工事・什器備品はそれぞれ耐用年数が異なる
  • 自社所有か賃貸店舗かで判断基準が変わる
  • 耐用年数の設定や工事区分は税務調査でも指摘されやすい

といった点をしっかり押さえておくことが大切です。

特に店舗運営では、開業・改装・入替が数年周期で発生するため、正しい税務処理を理解しておくことがそのまま利益の確保につながります。

もし判断が難しい場合は、税理士や専門業者へ相談することで、より安全で効率的なリフォーム計画が立てられます。
適切な耐用年数の設定と正しい処理を行い、無理のない資金計画で店舗づくりを進めていきましょう!

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この記事を書いた人

森 卓也

森 卓也

㈱ベータ取締役。
平成元年生まれ。三重県亀山市出身。
慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。
大学院在学中に不動産管理法人を設立し、20代で不動産オーナーに。
大学院(MBA)や不動産オーナーの経験を活かし、リフォーム費用を抑えるコツや信頼できる業者選びの秘訣など、リフォームに関して有益な情報を発信。

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